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新・のんき大将のごたく from 川口義之:2007-10-12


2007年10月12日(金)さよなら桃井マンション

10月14日、午後1時半。長年住み慣れたマンションの鍵を返す日が来る。建て直しにつき半年後に立ち退きを、との張り紙が出されたのが半年ほど前。9月30日が期限だった。(特別にちょっと延ばしてもらったが)寝耳に水というか、あり得ない!って状況(だって合間に栗コーダーの録音もツアーも、渋さの欧州ツアーもあるし…)から始まり、今は別のマンションに大小200個ほどの段ボールが積まれている状態に落ち着いた(落ち着いた?)。もともと現ロンサム・ストリングスの桜井さんと二人で、ぼくが学生の頃に住み始めたのだから95年の秋か冬あたりから借り続けていることになろうか。約22年。この立ち退きの一件でわかったのはマンションの出来上がったのが昭和39年の5月13日。いや6月13日だったかな。ちょうど私が生まれてから半年後に完成。私がもうすぐ44歳になるってことは丁度マンションの生涯の残り半分を共にして来たことになる。引っ越した当初から流石、桜井さんが見つけて来た物件だけあってすでに実に風情のある古びたマンションであった。公団住宅と似た作りだったと聞く。環境もなかなか変っていた。自分の住む3階からは隣の保育園の様子が伝わってきた。深夜に帰宅し、水浴びをする子供達のワーって声に起こされることも度々。マンションの地下にはバンドの練習スタジオもあり、寝ているとバスドラムの音がドン、ドン、ドン、ドンと規則的に響いて来た。早朝5時頃にそこのスタッフが、マンションの中庭でキャッチボールをしている音で起こされたこともある。そんな環境だけにバンドマンが多く住んでいたようで、夜遅くにギターとうたが聞こえて来たり。もちろん自分自身も大きな音でレコードを聞いたり、楽器を弾いたり吹いたり。てっきり防音が効いているように思っていたのだが実は結構漏れていたようだ。帰宅しマンションの階段を昇りかけるとアンプから鳴るギターの音が聞こえて来たり。桜井さんが出て行ったあとはやはりサークルの後輩と一緒に住んだのだが彼はよく酔ってトランペットを吹いていた。マンションの階段を昇りかけるとプヒーって音が聞こえて来たりした。彼、山ちゃんこと山崎は現在ビクターの営業課長か何かというもはや業界のベテランさん。当時はイエロー太陽’sというバンドでキーボードをしていた。あの’たま’を輩出したバンドのオーディション番組のイカ天に出るってんで、どんな服を着ていきましょうかって、前の日に部屋で衣装を選んだ記憶がある。まさかチャンピオンになるとは思わなかったが。先日そこのギターだったコンちゃんが結婚したのだが、そのパーティーで再結成ライブをしていて、なかなか当時よりも演奏が達者だったりしておもしろかったな。さて、仲間からは桃マンの愛称で親しまれていたこの場所には、そんな後輩達が夜な夜な集まっては宴会をしていた。そこに近所に引っ越していた桜井さんも自然に加わっていたり、ときには青山陽一くんとかまわりのミュージシャン仲間も遊びに来てレコード聞いたり、ギターを弾いたり。後輩達と酔ったいきおいでそのまま下のスタジオに楽器をしょって行ってセッションみたいなこともあった。前述のコンちゃんこと今野のパーティーのあと、5、6人を引き連れて懐かしの桃井マンションお別れパーティーを開催した。引っ越し前に宴会を開くのは無謀ではあったが是非そうしたい、それは私だけではなく、そこに遊びに来ていた多くの仲間の共通した思いだった。さて、私は莫大な荷物を片付けるための交渉として、同じ階の、すでに引き払われていた隣の部屋を借りていた。つまり同じマンションの部屋の鍵を2世帯分持っていたってこと。実は隣の部屋が空く前に同じ階のもう少し離れた部屋を荷物の移動場所にしていたので鍵は3つだった。306号室,305号室,302号室。すでに隣の305号室にも段ボールを80個ほど移動していたが元々住んでいた部屋よりも片付いていたので、そちらを第一会場とした。段ボールが積まれた部屋は一見引っ越し直後のようにも見えた。自分の住み慣れた部屋と丁度対称の形をしていたその部屋は妙に落ち着いた。朝4時過ぎまで懐かしい話に花を咲かせた後、三々五々家路に着く。それは自分も同じでここ5、6年は荷物部屋として機能していたマンションを後にして一時別棟に帰宅。そこからの数日間の引っ越し作業は寝る間もなく進む。合間に2本渋さ知らズのライブを挟みながら、引っ越し業者から派遣された2名のプロとともに梱包、そして翌日は3名の腕利き運び屋たちが一気に移動。荷物を移された先の3LDKのうちの2部屋とフローリングは段ボールの海と化した。そして桃井マンション306号室は、薄汚れているものの、引っ越してきたときと同じかたちに戻っていった。数日後か数ヶ月後、そこは打ち壊され、一旦更地になり次の建物が出来上がっていくはずだ。さてと同じ年齢の私は次にどう進んでいったらよいものか。

[link:95] 2007年10月12日(金) 11:46


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