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興味深かったのは、あれほどすごい演奏をするタラフの人たちが、意外と物を欲しがるということだ。最初我々の楽屋にタラフのアコーデオンの人がふらりとやってきて、こまっちゃクレズマの張さんのアコーデオンを弾きはじめた。めちゃくちゃうまい。ひとしきり弾いたあと、自分のアコーデオンとベルトを交換してくれと言う。うーん、なんでだろう、サッカーの選手がユニフォームを交換するみたいなものなのだろうか。人の良い張さんが同意すると、そのアコーデオンの人が自分のアコーデオンのベルトを持ってきた。それを見て、張さんは一言「これは、私のほうがめちゃくちゃ損です。」。ベルト自体も貧弱だが、ねずみの食ったあとがあった。本人が言っていたので確かにねずみだ。他にもバイオリンの松井さんは弦をたかられていた。人の良い松井さんが、弦の切れた人にA弦をあげたら、別のバイオリンのじいさんが「A弦くれ。」とやってきた。で、松井さんがA弦はさっきのでおしまい、とケースの中を見せたら、この弦とこの弦もいるんだと別の弦を持って行った。普通予備の弦くらい持ち歩くと思うのだが。また、帰りがけにサックスの多田さんがめがねを無くしてさがしていた。スタッフに楽屋になかったか聞くと、「あ、別の人に渡しましたけど。」とのこと。なぜかタラフのメンバーが持っていた。女物の度付きめがねをどうするんだろう。コチャニがタラフの村に行った時に、あまりに貧しい村なので驚いたと言っていたが、今やタラフは結構稼いでいるのでは無いだろうか。少なくともルーマニアの所得水準に比べたらかなり稼いでいるはずである。それでも、一度身に付いた癖や価値観は変わらないのか。それとも、やっぱり芸人たるもの色と欲か。うん、そうだ。今日のこまっちゃクレズマを振り返ってみれば、タラフとコチャニのコンサート盛り上げて下さいよ、のお願いにほいほいとタダ同然のギャラでやってしまったが、これではいかん。あのチケットの値段(もちろんその価値のあるコンサートだったと思うが)で、あれだけお客さんが入っていたのだからなあ。
一言付け加えると、とはいえタラフの人はすごくフレンドリーないい人たちです。タダ同然のギャラをくれた会社もいい仕事をしているところなんだよなあ。今日はそのギャップを楽しんだ。